−日記帳(N0.1857)2016年10月01日−
デジタル遺品に思うこと
−日記帳(N0.1858) 2016年10月03日−
大隅教授ノーベル生理・医学賞受賞


読売新聞 10月4日(火)12時10分配信

大隅良典・東京工業大学栄誉教授


私の生活にパソコンやスマホは欠かせません。例えば、銀行からの入出金、株式の売買、ネット取引を日常的に行っておりますが、もしネット取引が出来なかったら、銀行の店頭に出向いたり、電話で株の売買したりするなど大変なことになります。

2016年版情報通信白書によると、15年末のインターネット利用率は13〜59歳で90%超。60〜64歳で82%、70代でも54%にのぼるとのことです。家族でネット取引しているのは私一人です。

ネット取引はパスワード(PW)を介して行われますから、もし私が家族にパスワードを知らせないまま死亡したら、ネット取引上の資産はデジタル遺品となり、家族がこれを相続することは事実上不可能となります。

従って、いつ訪れるか分からない死に備えて、ネット取引上の資産に関するパスワードなどのデジタルの情報を整理しておくことが大事です。最近、このデジタル遺品が社会問題として取り上げられるようになりました。

家財道具などのアナログ遺品なら専門業者で如何ようにも処分できますが、デジタル遺品はパスワードが判らない限り、手の付けようがありません。

30兆個以上の細胞からつくられる私たちの体。その細胞ひとつひとつが、生命活動を維持する上で、欠かせないのがたんぱく質です。その数、2万種類以上と言われ、体のさまざまな組織や臓器を形づくっています。

このたんぱく質のうち、不要になったものを分解し、必要なものに作り替える、いわば、リサイクルの仕組みが「オートファジー」です。不要なものは、膜に包み込み、酵素を注入します。すると、あたかも食べたものが胃の中で消化されるように分解されるのです。

分解されたたんぱく質はリサイクルされ、新しくたんぱく質を造るための材料になります。私たちが一定期間食事をとらなくても生きていけるのは、このオートファジーがあるからだとされています。

生まれたばかりの赤ちゃんを支えているのも、このオートファジーです。胎盤を介して母親から栄養を得ていた赤ちゃんが産まれてからミルクを飲めるようになるまでの間、栄養不足にならないのはオートファジーの仕組みで栄養を補っているからだとみられています。

オートファジーの働きを抑えた新生児のマウスは、通常のマウスに比べて栄養不足が激しく、寿命も短かいことが実験で確認されたということです。

一方、何らかの原因で、このオートファジーがうまく働かなくなると不要なたんぱく質が細胞の中にどんどんたまっていってしまいます。アルツハイマー病やパーキンソン病などは、神経細胞の中に蓄積した、こうしたたんぱく質によって引き起こされているのではないかと考えられています。

また、年齢を重ねることで老化によってオートファジーの働きが弱まり、これが、がんや糖尿病などさまざまな病気と関係しているのではないかとも考えられています。

オートファジーの解説図

上記の記事は、10月4日付けの「NHK NEWSWEB」から転載させて頂きました。

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