−日記帳(N0.1691)2015年09月22日−
老衰死について考える
−日記帳(N0.1692) 2015年09月24日−
フォルクスワーゲン 排ガス不正ソフト発覚


老衰死のよる死亡者の経年変化(9月20日NHKスペシャルより)

エンジン排ガス・テスト中のディーゼル乗用車


敬老の日の翌日、老衰死を取り上げるのは不謹慎と言われるかもしれませんが、敬老の日の前日の9月20日にNHKスペシャル「老衰死」が放映されたことを機会にここで取り上げてみたいと思います。

生きとし生けるもの、すべからく死する故に、安らかに死を迎えることは人の一生で最高の幸せかも知れません。老衰死は安らかに死を迎える手段だと思います。 高齢により全身各所の機能が衰えることによる死が老衰死または自然死ですが、実際には明確な傷病名をもって診断を下し難い高齢者の死因を老衰とする場合が圧倒的に多いように思われます。

私の実父は99歳で老衰死しましたが、立ち合った医師によれば癌を併発しており、どちらが直接の死因かはその時点では判らないと言っておりました。看病していた実兄は延命処置を希望しなかったとのことでした。父の死を嘆き悲しんだ実母はそのことも忘れて103歳ながら元気に特養で過ごしております。

特養では、保護者に要請が無い限り延命処置は取らないようです。NHKテレビでその事例が紹介されておりました。 口を開けて激しく息づかいする母親を見詰める息子さんの姿が痛々しく見えました。生き続けて欲しいと願うところを早く息を引き取ることを願うしかないからです。

上のグラフで、なるほどと思ったのは、老衰死が2000年を境にしてそれ以前は減少、それ以降は増加していることです。 2000年以前では老衰する前に病死する場合が多いのに対し、2000年以降では医学の進歩により病死する場合が少なくなったことが原因なのでしょう。

老衰死は苦痛を伴わないと言われております。老衰は腸内細胞が減少することから始まりその結果、食事を摂っても消化されないため飢餓状態になり、脳内モルヒネ様物質が分泌されます。すると意識レベルが低下し酸欠状態になり炭酸ガスが溜まって麻酔状態を誘起し、気持ちのいい夢うつつの穏やかな状態になります。

口を開けて苦しそうに見えるので酸素吸入を施すのは逆に本人に苦しさを長引かせることになります。そのままにして酸欠状態を持続させ、炭酸ガスを溜めさせて麻酔状態を誘起させることが本人を楽にさせることになります。死は時間の問題ですから早く逝かせてあげるのが本人のためです。

死期を迎えても、一日200mlの水を吸収できれば最長40日ほどで老衰死に至ると言われております。点滴注射・酸素吸入も、本人が幸せに死ねる過程を妨害する行為以外、何者でもありません。「食べないから死ぬ」のではなく、「死に時が来たから食べなくなる」のです。

老衰者に延命処置を施すことは本人に苦痛を長引かせるだけでなく、高齢者関連の健康保険や介護保険の諸制度の収支を悪化させる要因1にもなりかねません。以前は、現役も高齢者も同一の保険制度に組み込まれておりましたが、高まる高齢者の医療費を肩代わりして負担する現役たちが悲鳴をあげ、高齢者を別の保険組織に移行させて欲しいと訴えた結果、後期高齢者医療制度が制定されました。

現役組や前期高齢者に負担をかけないように、後期高齢者だけの組織の後期高齢者医療制度が発足したのですが、平成24年度で後期高齢者は約1,520万人でその医療費は12.6兆円で、日本国民の総医療費39.2兆円の32.2%を占めるに至りました。

この12.6兆円の10%(=1.26兆円)を後期高齢者、40%を現役、50%を都道府県別の広域連合が夫々負担しております。後期高齢者は別に年額30万円程度の後期高齢者医療保険金(1,520万人x30万円/人・年=4,560億円/年)を負担しておりますので、後期高齢者の負担金は併せて1.72兆円/年、負担率は13.7%となります。

つまり、後期高齢者は自分たちの医療費の86.3%を現役と都道府県の税金でまかなってもらっているわけです。私の母がそうでしたが、重篤でもないのに入院したり、効きもしない薬を服用することは後期高齢者の貴重な医療費の無駄使いに繋がります。老衰者に延命処置を施すことは本人の人生の終焉を汚すだけでなく、後期高齢者の貴重な医療費の無駄使いにも繋り罪深い所業と言わざるを得ません。


日本の乗用車保有台数は凡そ7,700万台程度と推定されておりますが、ディーゼルエンジン装着の乗用車は下図に示すように僅か8万台程度の0.1%に過ぎません。しかし、欧州では50%以上、フランスでは707〜80%に達すると言われております。ドイツもBMW、メルセデス・ベンツ、フォルクスワーゲンなど高性能のディーゼルエンジンを載せた乗用車を欧州市場で展開しております。

国内でのディーゼルエンジン乗用車保有台数の推移

実は日本でもかつて乗用車でディーゼルエンジンが普及した時期がありました。80年代には8%程度までシェアが高まりましたが、90年後半からは下降線をたどり現在の0.1%に至っております。1990年の自動車税改正で排気量2000cc以上のディーゼル乗用車が増税対象となったことや、99年に東京都が基準値以下のディーゼル車の走行を禁止し、石原都知事が煤入りのペットボトルを振りかざしてディーゼルエンジンの有害性を訴えたことなどがその理由でした。

ディーゼルエンジンの有害性を訴える石原都知事

ワシントンとベルリン、サンフランシスコにオフィスを持つ非営利団体の国際クリーン交通委員会(ICCT)が欧州当局から排ガス検査の実施を委託され、2013年の早い時期にウェストバージニア大学の代替燃料・エンジン・排ガスセンターで研究者らを雇用して検査を実施しました。1989年から、エンジン排ガスと代替燃料の使用について研究している同センターが、VWのパサートとジェッタを含めた3車種のディーゼル乗用車を検査することになりました。

パサートとジェッタに加えBMWの「X5」を使って2013年3−5月にかけて試験したところ、VW車は試験場では排ガス規制の法的基準を満たすのに、路上では基準よりはるかに多くの窒素酸化物を排出する事実が判明、センターは14年5月に研究結果を公表し、カリフォルニア州の大気資源委員会が調査に乗り出しました。

その結果、VWが排ガス規制を逃れるため、ディーゼル車に試験のときだけ有害物質の排出を低く抑える不正なソフトウエアを搭載していたことが判明しました。 今回の不正は、アメリカの環境当局の調査で発覚したのに続いて、ヨーロッパでも同様の不正があったことがフォルクスワーゲンからドイツ当局への報告で明らかになり、このソフトを搭載した車両は世界でおよそ1,100万台に上ることが明らかになりました。

不正ソフトウエアを是正するのに7万円を要するとのことですので、事実とすれば7,700億円を要します。世界一のVWの資力をもってすれば、その程度の費用の捻出は可能でしょうが、VW離れによる売上減が加速すると経営母体が揺らぐ危険をはらんでおり対応は容易ではありません。

ヨーロッパ連合は「明らかに違法な行為で、全体像を把握する必要がある」として、域内の各国に対し、同様の不正の有無や問題のある車両の台数などを調査して報告するよう促しています。このうちディーゼル車が国内を走る自動車の62%を占めるフランスでは、ロワイヤル・エコロジー相が、「不正がないことを消費者に証明しなければならない」と述べ、メーカーを問わず無作為に車両を選んで実態調査に乗り出す考えを示したほか、ドイツでも、運輸当局がフォルクスワーゲン以外のメーカーに対しても調査を進める方針ですので、第二、第三のVWが出てくる可能性が有ります。

太田国土交通大臣は他のメーカーの車に同様の不正がないか、調査に乗り出す考えを示しましたが、国内ではガソリン車が中心で、ディーゼル車の正規販売は行われていないことを会社に確認したことを記者会見で述べております。


<参考>本日付け朝日新聞・天声人語

「天国への入り口」と書かれた門と、「天国に関する講演会への入り口」と書かれた門が並んでいた。すべてのドイツ人は講演会への門に殺到した――。笠(りゅう)信太郎著『ものの見方について』が紹介する小話だ。かの国の人の理屈好きに向けた皮肉だろう

ドイツ人は自国の製品について、「固くて丈夫で、堅牢な」と誇ることが多いという。これは小塩節(おしおたかし)著『新ドイツの心』に教えられた。剛健で、秩序正しく、総じて真面目という印象を、ドイツの人々に持つ向きは多いのではないか

それだけに驚きが大きい。自動車大手のフォルクスワーゲンが、米国で排ガス規制を不正に逃れていた。基準に適合するかどうかの試験の間だけは基準を満たす。普通に道を走る時は基準を大きく超えて排出する。なんとも巧妙で悪質な手口だ

同じ事態を引き起こす可能性があるディーゼル車は世界で1100万台という。ブランドイメージを傷つけただけでなく、米当局からの制裁金を始め、経営への打撃も甚大だろう。環境先進国というドイツの看板も損なわれかねない

フォルクスワーゲンは日本人にもなじみ深い。カブトムシの愛称で呼ばれた丸っこい車体を懐かしむ方は多かろう。一転して直線的なゴルフが1970年代に登場したのを、筆者の世代はまぶしく眺めた

昨年度、世界でのグループ新車販売台数でトヨタを抜いた。年度ベースで初の首位だ。グローバル競争は苛烈(かれつ)を極める。その負の側面につい想像が及ぶのも致し方ない。


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