中欧5ケ国旅行を終えて思うこと(5)
(EU加盟国間の国境は無いも同然だった!)
中欧5ケ国旅行を終えて思うこと(6)
(ヨーロッパのビールは美味しくて安かった!)


オーストリアとスロベキアの無人の国境ゲート

日本のような、地続きの国境の無い島国に住む者にとって国境は全く馴染みの無い存在ですので、国境には何か格別の思いを感じます。国境線が川に沿っている場合は国境を意識できますが、平地の場合は国境線が常に識別出来る状態で線引きされておりませんし、国境警備隊員が監視しているわけでもありませんので、知らないまま国境越えしてしまうことも充分起こり得ます。

上の画像は、オーストリアとスロバキアの国境ゲート前でトイレ休憩ををとった時に撮影した無人の国境ゲートです。車は全く自由に国境越えすることが出来ます。勿論、Nシステムのような監視カメラは常に作動ていて、遠隔操作で監視していることは考えられます。今回訪問した中欧5ケ国はいずれもEU加盟国ですので、加盟国間での国境越通過には、基本的にはパスポートチェックは無いとのことでした。以前、北欧4ケ国を旅行した時も自由に国境通過できましたので、欧州は一つになりつつあるとの印象を強く受けました。

オーストリアとスロバキアの国境ゲートの航空写真

上の画像は、我々が通過したオーストリアとスロバキア国境ゲートの航空写真です。左上のスペースは検問場と思われます。EU加盟以前は多くのトラックが検問待ちで渋滞を繰り返していたとのことです。ところで、平地での国境がどのようになているか、興味が有りましたので、我々のツアーバスがその付近を通過した、オーストリア、スロバキア、ハンガリーの三国が交差する地点をグーグル画像でチェックしてみました。下の画像はその地点の地図です。

オーストリア、スロバキア、ハンガリーの三国交差点(赤丸)

この地図を航空写真では下の画像のようになっております。国境線は幅数メートル程度のあぜ道のような緩衝地帯が帯状に走っております。特に、鉄条網や壁が構築されているようには思えず、一跨ぎすれば誰でも国境を越えられそうです。
国境のあぜ道が一般道と交差する地点の航空写真

@に示す三国交差点も、ただあぜ道が交差しているだけのようです。Aの地点が気になったので航空写真でチェックしてみました。それが下の画像です 青い点線で示す国境のあぜ道が赤丸の地点で、ハンガリーからの一般道と交差しておりますが、この一般道は国境のあぜ道に当たるとそこで終点となり、オーストリア側には繋がっておりません。そして、その終点のオーストリア側に立て看板らしきものが建っております。国道の国境ゲートとは違って、何か風情が注がれる国境風景です。こんな国境に是非、行ってみたいものです。

国境のあぜ道が一般道と交差する地点の航空写真(拡大)

チェコの代表的なビール、「ピルスナー」

今回の中欧5ヶ国旅行の目的のひとつに、ビールの本場、チェコ、ドイツでビールを堪能することが有りました。しかし残念ながら、オーストリアからチェコに移動する頃から体調を崩して下痢気味となり、プラハのホテルで夜中に吐き気をもようしてトイレで上へ下への大騒ぎとなってその日は前菜とスープに少し口を付けるだけ、アルコール類は一切口にせず、ただただ同行のツアー客が美味しそうに飲むのを見守るだけでした。従って、楽しみにしていたチェコのピルスナーを飲むことが出来ませんでしたので、上の画像は私が撮影したものではなく、さるサイトの画像をお借りしました。ビールのことを話題にするのに、どうしてもこのような画像が要りますのでご容赦願いたいと思います。

私は、かって仕事の関係でサッポロビールさんとお付き合いさせて頂いた関係で、ビールについていろいろと教えて頂きました。その内容を本サイトの雑感記28章に、「ビールよもやま話」で紹介させて頂いております。従って一応、ビールについての知識は持っているつもりです。そんな立場から思うに、多くの日本人はビールについて間違った考え方や飲み方をしているように思われてなりません。まずは、ここでそのことを取り上げてみたいと思います。それは次の3点です。

(1)ビールの注ぎ方(コップを傾けること):
(2)ビールの鮮度、生に対する知識不足:
(3)「とりあえずビール」との発想:

サッポロビール名古屋工場で、工場長にビールを注いで頂いた時でした。私は注ぎやすいように配慮したつもりでコップを傾けたたところ、「コップは真っ直ぐに立てて下さい。ビールの味は鮮度と注ぎ方で決まります。最初速く、徐々に遅く注いで細かい泡が上に出来るように注ぐのがビールを美味しく頂くコツです。コップを傾けられると、そのような泡を調整する操作が出来ないのです。泡が出来にくいので、傾けることはビールをより多く注いで下さいとの意思表示に受け取られ、卑しい受け方とされております」

そこで、実際に工場長流に注がれたビールと傾けて殆ど泡の無いビールを飲みくらべてみたところ、明らかに工場長流に注がれたビールの方が美味しかったことから納得しました。その場合、泡の下に舌を入れて飲むのが秘訣で、ビールのうまみ成分が逃げていくのを泡の層が防止するのが、この注ぎ方のセオリーとなっております。 そして、その一週間後に、地元局のCBCに工場長が出演され、当時一気飲みタレントとして人気の高かった渡辺正行さんに上述のビールの注ぎ方、飲み方を伝授するシーンが有りました。

ビールは生鮮食材と同様に鮮度が第一です。主婦のみなさんはスーパーなどでビールを買う場合、銘柄と値段だけに注目して、印字されている製造年月旬をあまり見ません。下の画像は私が7月25日に近くのスパーで買ったスーパードライの缶底に印字されていた製造年月旬と賞味期限です。製造年月旬=2009.07上H は、2009年7月1日から10日に製造されたことを示しており、平均をとって7月5日に製造されたとすれば、製造後20日ですから鮮度抜群です。ビールの賞味期限は製造後約8ケ月とされておりますが、長くても3ケ月が私の持論です。一般的には1ケ月前後のものが流通しておりますので、できるだけ製造後1ケ月以内のものを10日以内に飲みきれる量に留めて買うのがいいと思います。

缶ビールの製造年月旬、趣味期限の事例

ビヤガーデンや居酒屋さんで樽からジョッキに注がれて出される生ビールは格別に美味しいのですが、実はこの生ビールは瓶や缶に詰まれている生ビールと全く同じものです。上述の製造後20日程度の缶生ビールも美味しかったのですが、店で出される樽生ビールには到底及びません。同じ日に作られたビールは業務用の樽生用と一般向けの瓶や缶に分けられ、樽生用は冷蔵され仕立て便で製造後数日以内に店に出荷され、店も出来る限り短い時間で使い切り、冒頭の画像に見られるようにクリーミーな泡が30%程度できるようにビールサーバーでジョッキに注ぐ必要があります。もし、出荷後、2、3週間経過した樽生ビールをサーバーを使わずにジョッキに注いで出したら、一般用の瓶生や缶生と変わりません。むしろ、上述の工場長流の注ぎ方、飲み方をした方が美味しいと思います。

居酒屋など何人かの宴席で、「とりあえずビールで乾杯」という言葉がよく聞かれます。これを、チェコやドイツで発声したら猛烈な顰蹙を買うはずです。彼等はビールをこよなく愛しており、乾杯の時だけ飲むようなことは絶対にしません。チェコのレストランで現地の人たちがビールを飲む様子を見ましたが、コップを飲み干すとお代わりのオーダーをしており、ワインやウイスキーに変えるようなことはしておりませんでした。同行のツアーの方々も500mLのビールをお代わりのオーダーせずに食事が終わるまでチビチビ飲んでおりました。

ビールをチビチビ飲んでいると、酸化が始まり温度も上がり、泡も消えて炭酸ガスが抜けて味が落ちてしまいます。 ビールは高温に曝されるとホップの苦味だけが強調され、うまみや、まろやかさに欠ける味になり、いわゆる、老化現象を起こしてしまいますので、泡が消え去らないうちに飲み干さないと不味いビールを食事に添えることになります。 乾杯したビールは一気に飲み干してこそ、乾杯であり、最も美味しくビールを飲むことに繋がります。とりあえずビールで乾杯して一気に飲み干さないで残すような方は、ビールより水かお茶で乾杯された方がいいと思います。私は、「とりあえずビールで乾杯」という言葉は大嫌いです。

前置きが長くなってしまいましたが本題に入ります。私がチェコやドイツのビールに拘るのはその原料にあります。ビール製造の歴史は9世紀までさかのぼり、ドイツの名産となっておりましたが、中世のミュンヘン地方で質の悪いビールが横行していたことからドイツビールの伝統を守るために、赤髭皇帝のフリードリヒ一世が、1156年の「アウクスブルク市条例」で、質の悪いビールを醸造した業者を罰することにし、そして1516年にバイエルン候ヴィルヘルム四世が「ビールの原料には大麦(麦芽)、ホップ、水の三つの原料以外を使用してはならない」という有名な「ビール純正令」が公布され、これが今日まで一部の例外を除いてドイツビールやチェコビールに引き継がれております。

ところが日本では、大麦(麦芽)、ホップ、水以外に副原料として、アサヒ・スーパードライに代表されるように、米、コーンスターチ等が使われ、税法上、大麦(麦芽)の含有率が2/3以上をビールとし、2/3未満には発泡酒等とされております。つまり、「ビール純正令」が守られているドイツでは、アサヒ・スーパードライはビールとして認められず、発泡酒とされることになります。日本酒も同様で、我々大衆が飲むごく普通の日本酒には、協和発酵などで連続蒸留機で蒸留された醸造用アルコールが添加されておりますので、純粋な発酵酒とは言えません。

アサヒビールなどでは、コーンスターチを添加する理由を、麦芽だけだと重めの味に仕上がるので日本人の好みの、すっきりした味にするため、また醸造用アルコールを添加する理由を、酒の貯蔵時の安定性を引き出して貯蔵することにより、より熟成感のある風味豊かな口当たりにするためとし、いずれも「混ぜ物」「かさ増やし」ではないとしております。

しかし、その一方で、麦芽100%の「サッポロ エビスビール」と「サントリー プレミアム・モルツ」、純米酒、吟醸酒など醸造用アルコールが添加されていない100%発酵酒は、本当に美味しいと思います。現に、今年の春にはキリンが「一番搾り」を麦芽100%に一新し、アサヒも5月に麦芽100%の「ザ・マスター」を発売と、今年はビール4大メーカーによる麦芽100%のシェア争奪戦が展開されております。やはり、添加などせずに良質の原料を使用したお酒が本当に美味しいのです。

アルコールは、アルコール分解酵素によってのみ消化されますが、アルコール分解酵素の分泌が欧米系の人種に較べて少ない日本人は、世界でも名だたる酒に弱い人種です。それ故に、日本人は、より良質の原料で作られた美味しいお酒を厳選して飲むべきとの考えが私の持論です。しかし、この不景気下での晩酌に、安い発泡酒等や普通酒もまた欠かせないのも偽らざる現実でもあります。今回の旅行で本場のビールを堪能したたかったのは、このような背景が有ったからでした。しかし、体調不良により、チェコ、ドイツの本場のビールを飲むことは出来ませんでした。

しかし、ハンガリー、スロバキア、オーストリアのビールは飲みました。やはり、麦芽100%系で、樽からサーバーでハーフグラス注がれたビールは、どちらかと言えば、「サントリー プレミアム・モルツ」に近い味わいで美味しく頂けました。500mLで2ユーロ(260円)は日本の半値程度で安いと思いました。ミネラルウオーターも2ユーロでしたから、レストランなどで、水を無料で飲める日本人は違和感と戸惑いを感ずるようです。そして、帰国便の機内で、漸く体調が癒えて飲んだビールが「アサヒ・スーパードライ」だったとは・・・・・。


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