アンコールワット第一回廊のレリーフ「乳海攪拌」についての解説

ヒンドゥー教の聖典のうちでも重視され、世界3大叙事詩の1つとされる「マハーバーラタ」は「ラーマーヤナ」とともにインド2大叙事詩とされております。その「マハーバーラタ」の第1巻15章から17章にかけて「乳海攪拌」に関する記述が有ります。この記述について、インドの神話や文化に造詣の深い「天竺☆風まかせ」の管理人さんの解説を引用させて頂いて、「乳海攪拌」を次のように理解させて頂きました。

神々が「アムリタ」と呼ばれる不死をもたらす霊薬を取り出す方法を協議していたところ、ヴィシュヌ神がブラフマー神に「神々と悪神の阿修羅によって海を攪拌すればアムリタが出てくるのでは」と提案し、これが実行されることになりました。そこで、攪拌棒に「マンダラ」という山を選びました。マンダラ山には、鳥たちや獣、キンナラやアプサラスといった天人、天女が住み、上にそびえる高さと同じだけ地下にも潜っていましたので、この山を動かせば巨大な攪拌棒になります。

次に、この巨大な攪拌棒を海の中で廻すのには巨大な支えが必要になります。そこでヴィシュヌ神は、その支えとしてヴィシュヌ神の化身である巨亀「クールマ」を選び、この亀の甲の上に「マンダラ」を乗せました。後は、亀の甲の上で攪拌棒を廻せばいいわけです。そのためには、攪拌棒に紐を巻きつけて左右に引っ張り合えばいいわけです。そこでヴィシュヌ神は、紐として大蛇ヴァースキを選び、自らの体に巻きつけました。次にに必要になるのは、この紐の大蛇ヴァースキの頭と尾を綱引きのように引っ張り合う動力源です。

その動力源として神々を選びました。同じ神々でも仲良し同士では綱引きになりませんのでお互いに反目し合う神々を選ぶ必要が有ります。そこで大蛇ヴァースキの尾を引っ張るのをヒンドゥー教の神々、頭を引っ張るのを、後に仏教界では善神になりましたがヒンドゥー教では悪神の阿修羅にすることにしました。しかし、一方が強過ぎては綱引きになりません。鋸を引くように押したり引いたりしてバランスを取る必要が有ることから、ヴィシュヌ神が采配を振るうことしました。

こうして、神々と阿修羅の綱引きによる動力が攪拌棒を回転させ、海が掻き混ぜられました。その壮絶な攪拌によって、ヴァースキは口から煙と火を噴き出し、それは雲となり雨を降らせました。マンダラ山の山頂からは花の雨が降り、海中の生き物は死滅し、山々は炎で包まれ、山にいたすべての生物も死んで海に落下しました。樹液や薬草のエキスが海に流れ出し海に落ちたすべてのものと混ざり合って海は乳状となりました。

しかし、神々も阿修羅も疲れきっているのに、いまだにアムリタは出てきません。そこで、ヴィシュヌ神が力を授け、皆は再び攪拌にトライしました。すると、太陽、月、シュリー(仏教では吉祥天)スラー(酒)の女神、白馬が生じました。さらに、カウストゥバという宝石が現れ、これはヴィシュヌ神の胸に飾られました。太陽が神々の側に行ったので、月、シュリー、スラー、白馬も神々につきました。そして、遂に天界の医神ダヌヴァンダリ神がアムリタの入った壺を持って現れたのです。


私が現地で撮影した画像
(亀の部分しか写っていない)

上の画像に写っていない上の部分
(巨亀の上に山が乗りその上でヴィシュヌ神が大蛇を巻きつけております)

このサイトから引用させて頂いた画像
(画像が更に広がって左右で綱引きしている兵隊まで見えております)

このサイトから引用させて頂いた画像
(乳海攪拌の様子が判りやすく図解されております)